男性は生涯に3人のうち2人が癌に罹るといわれ、がん罹患率(病気になる率)は男性で、1位前立腺、2位胃、3位大腸、4位肺、5位肝臓、6位膵臓です。一方、女性は生涯に2人のうち1人が癌に罹るといわれ、がん罹患率(病気になる率)は女性で、1位乳腺、2位大腸、3位肺、4位胃、5位子宮頸、6位膵臓となっています。消化器(大腸、胃、食道、肝臓、膵臓、胆嚢・胆管)を合計すると全体の44%を占めます。
問題となるのは癌による死亡率です。男性の癌死亡率は、1位肺がん、2位大腸癌、3位胃がん、4位膵臓癌、5位肝臓癌。女性の癌死亡率は、1位乳がん、2位大腸癌、3位肺がん、4位膵臓癌、5位胃癌、6位子宮頸がん。死亡率上位にあるものは早期に発見する必要があります。日本では高齢化に伴い加齢によるがん死亡者数は増えていますが、年齢調整した統計ではむしろ死亡率は近年低下傾向にある癌もあり、肺がん、胃がん、大腸がんの死亡率は近年改善されています。禁煙啓蒙やピロリ菌感染者数の低下、大腸癌検診の浸透などによる影響と思われます。癌の年齢調整死亡率でも減少していないのは、男性(膵癌)、女性(乳がん、膵癌、子宮頸がん)となりこれらへの対策が必要になっています。
一般的な癌の原因に遺伝があげられますが、その傾向がある乳がんと大腸癌も全体の5%を占めるに過ぎず、そのほかの原因がほとんどです。喫煙(肺、咽喉頭、膵、etc)、感染(H.pylori→胃、HBV→肝臓、HCV→肝臓、HPV→子宮頸)、飲酒(食道、咽喉頭、大腸、肝臓、乳腺)、過体重・肥満(食道、大腸、膵臓、肝臓、乳腺、子宮体部、腎臓)、糖尿病(すべての癌の可能性を高める)
<膵癌の非遺伝的リスクファクターodds比>喫煙1.7~2.2、肥満1.1~1.4,飲酒1.2~1.6、糖尿病1.8~1.9、新規2型糖尿病発症2.1、慢性膵炎13~14、IPMN16
働き世代では会社検診をうけ上記消化器系癌の検診を受ける機会がありますが、癌の好発年齢はむしろ退職後であり上記リスクが高いかたは、とりわけ定期的(計画的)な検診が必要と感じています。定期的な検診を受けていない55歳以上の方で、過去の喫煙歴がある方、少量でも毎日飲酒する方、BMI>25の方、耐糖能異常傾向の方(HbA1c>5.5)、は定期的な胃大腸検査以外にも腹部超音波エコー検査による肝胆膵のチェックが必要と思います。がん検診学会からも医師から患者さんへ積極的な働きかけが必要と指導をうけています。当院でもリスクが高い方へはおせっかいかもしれませんがエコー検査を勧めています。まずは腹部超音波エコー検査を年に1回受けてみましょう。